親に呪われた子供
最近の話題が心から辛かったので少し吐き出ておきたくなった。くだらないモブのしみったれた昔話だ。
子供にとって親とは呪いだ。という世界観で私は生きてきた。
祝福や幸いや愛などと親が結び付いており、呪いなんかであるわけがないと言われたら、そうですかお幸せに、としか申し上げられない。
私はいわゆるイージーチャイルドで、私の両親はヒステリックな怒鳴り合いの喧嘩をし、時には物を投げる人だった。
人の親とはそういうものだと思っていたのだが、最近になってどうにもそうでもない親という存在があるらしいと知り、未だ半信半疑である。本当にそんな親いるんですか?
まぁいい。とにかくそんな家庭環境に育った私は、幼稚園の頃にははっきりとこう思っていた。
「私が生まれてこなければ父と母は喧嘩しなかった。私が悪い。私なんか生まれてこなければ良かった」
私とは生まれながらに悪い存在で、だから罰を受けている。罪を償わなければ罰は終わらない。だから私は、両親に媚を売った。
「パパもママも霊感があるからモブも不思議なものが見えるかもね〜」と言われれば、何もない空間に何かが見えてますよみたいな顔をして手を振った。
そうすると父も母も子供は凄いな不思議だなみたいな反応をして喜んでくれたので、私はそのまま成長し、中二病を拗らせてちょっと精神がバグったが、まぁ瑣末事だ。
「パパは文系だから(ママは理数系だから)モブは国語(数学)の才能があるはず」と言われれば、死ぬ気で勉強をした。点数が良かった理由が才能なのか、努力なのか、今はもうわからない。頭の良さはわりと遺伝で決まるのでは?と思っているから、そういう意味では才能だったかもしれない。
両親は従順で優秀な私を褒め、私は尻尾を振って愛を請うた。
彼らの意に沿わない異母兄姉に父が激昂して家の窓ガラスを叩き割ったりしたのを見てきたし、両親がそれぞれ互いの悪いところを散々私に愚痴ってくるのも笑顔で聞いていたので、彼らの憎しみを買わない為には四六時中尻尾を振って腹を見せる必要があると確信していた。
まして私は、生まれてきてはいけない子だったのだ。生存を許されるには、それくらいしなければならない。そう思っていた。
子供は悲しいほどに無知で無力だ。親の言葉を絶対だと信じてしまうし、親の望むあり方に従おうとしてしまう。それが子供の生存戦略だ。
そうして育った子供の心は、大人になったからって健やかになったりしない。努力で多少は変わるけども、私は未だに条件付きでない愛情がこの世にあることを信じていない。
愛とは対価だ。相手を喜ばせた結果に応じて支払われるものだ。無償の愛? 神様だって正しく信仰しなければ愛してくれないのに?
まぁいい。そんなことはどうでもいい。私は無事モブとして生きているから、なんでもいいのだ。
とにかく、つまり、そう。そのように育った私は、親という存在の大きさを知っている。それが呪いであることも知っている。
何が正しいとか、間違ってるとか、そんなことはどうでもよく、ただ子供にとって親とは絶対で、親に逆らっては生きていけないという確信が子供にはあるものなのだと知っている。
親があなたは神様と話せるのねといえば、私は話せもしない神様と話して守護霊だろうが前世だろうが見てみせただろうし、空から金色のキラキラしたものが降ってくるとほざくだろう。
学校の無益さを説き、我が親の正しさを行動で示して周囲に迷惑をかけることも、きっと厭わない。
親がいる限り、それは続く。親殺しに成功しない限り、無限にだ。
反抗期で済む話、と言われたなら、そうですかお幸せに、としか申し上げられない。
反抗期の存在を、私は信じていない。そんなもの、あるわけがない。子供は親の所有物で、親に生殺与奪の権があり、反抗とは死だ。自殺するか、従うか。その二択の中で生きている。常に両親を喜ばせ続けなければ恐ろしい目にあって殺されるのに、反抗なんてしている暇があるものか。
親に呪われた子供が、親殺しを成し遂げるには、もはや成人を待つしかない。
親戚などにまともな人格者がおり、助けてくれるなら話はまた違うかもしれないが、他人の助力を請わないのなら、成人するしかないのだ。
成人してようやく、親の所有物ではないと法的に保証される。
自力で家が借りられる(保証会社ありがとう。緊急連絡先が買える世の中万歳)仕事も親の承諾なしにできる。転出転入だって自分で出来る。衣食住を親に頼らず手に入れられるようになって、はじめて、親と相対する事が出来る。
絶縁を申し出るのか、殺し合うのか、喧嘩するのか、逃げるのか。それは個々人のやり方だ。だが、成人するまでは何もできない。親の承諾なしに何かしても、あっという間に契約は白紙だ。そういう世の中だ。
だから、年端も行かない青少年に、お前の親はおかしいお前の言ってることやってることは間違ってる引き返せ、なんて言って、どうなるんだろうと最近とみに思う。
あなた方が助けるのか? 親の代わりに衣食住を保証して、まともな環境で暮らせるようにして? 教育を一からやり直して、凝った心を何年とかけて一つ一つ丁寧にほぐして、場合によってはカウンセラーも探して、莫大な金と労力をかけて愛そうというのか。いつ殺しに来るかもわからないおかしな親から命を守ってくれるのか。出来ないだろう。やらないだろう。
やいのやいの騒いでも、当人を追い詰めるだけじゃないのか。私たちには何もできない。無力なんだから、黙っていればいい。無力でないというのなら、具体的な行動を起こせば済む話だ。
呪われた子供を更に呪って追い詰めて、一体かれらは、何がしたいんだろう。